久米裕選定 日本の百名馬

タケシバオー

父:チャイナロック 母:タカツナミ 母の父:ヤシママンナ
1965年生/牡/IK評価:1A級
主な勝ち鞍:朝日杯3歳ステークス、天皇賞・春、東京新聞杯

▸ 分析表

《競走成績》
3歳時は8戦5勝、4歳時に10戦3勝、5歳時に9戦8勝で、国内27戦16勝、2着10回、3着1回、着外なし。米国ワシントンDC2回出走(着外)。主な勝ち鞍は、朝日杯3歳S(芝1,600m)、東京4歳S(ダ1,700m)、天皇賞(春、芝3,200m)、京都記念(芝2,400m)、東京新聞杯(ダ2,100m)、英国フェア開催記念(芝1,200m、1分10秒4=レコード)、毎日王冠(ダ2,100m)。他に皐月賞2着(優勝馬=マーチス)、ダービー2着(優勝馬=タニノハローモア)。

《種牡馬成績》
ドウカンヤシマ(朝日チャレンジC、東京新聞杯、金杯、函館記念、京成杯3歳S)、トウカンタケシバ(愛知杯2回、皐月賞3着=優勝馬トウショウボーイ)、ハッピーオールトン(クイーンS)、公営=ハツシバオー(東京ダービー、東京大賞典、羽田杯、東京王冠賞、京浜杯)、アジシバオー(日経新春杯)、その他にも、中堅クラスの勝ち馬を輩出し、内国産種牡馬として実績を残した。

父チャイナロックは英国産、英・仏で走り25戦7勝。自身上級レースでの勝ち鞍はないが、11~14Fの距離で実績を残し、ヨーロッパのスタミナの伝え手の役割を期待されて、日本に輸入される。1973年にチャンピオンサイヤーとなり、本馬タケシバオーのほか、「夏の上がり馬」の代名詞となったアカネテンリュウ、競馬大衆化の立役者ハイセイコー、ステイヤーのメジロタイヨウ、南関東公営の上級馬ヤシマナショナル、マルイチダイオーなどを輩出し、日本競馬に多大な貢献を果たした。

母タカツナミは不出走。母の母クニビキは豪州産で、南関東大井の抽選馬として輸入されたが、競走成績は0勝。

母タカツナミからは、このタケシバオーのほかは、これといった産駒は出ていない。またその母系をたどっても、7代目のMeltonでようやく英国馬にたどりつくというように、まさに生粋の豪州系といった血統内容。

BMSのヤシママンナは、中央競馬で4勝したものの、いわゆる大レースの勝ち鞍はなく、血統のセールスポイントといえるものもとくにはない。

タケシバオーが種付けされた1964年時点では、その父チャイナロックも、まだ種牡馬として実績を残していたわけではない。したがって、こうした父母の間に生まれたタケシバオーは、一般的な血統評からすれば、注目されるはずもなく、当然のことながら売れ残ってしまい、母タカツナミの共同所有者の一人が馬主として引き取ることになったという。

タケシバオーの血統では、まず初めに現われるクロス馬は4代目のGainsboroughとSon-in-Lawで、ともに4×6の中間断絶。両者はBay Ronaldで結合し、まずは連動態勢を確保。

次いで、6代目でクロスしている主な血を検証すると、スピードのアシストとしてOrby、Cyllene。スタミナとしてSt.Simon、Spearmint、Santoi、Desmond。これらの血は、それぞれGainsborough、Son-in-Lawの傘下におさまり、能力形成に参加していることが読み取れる。中でも、とくにSt.Simon(25個)、Galopin(29個)を核とした結合の強さは、この配合の見どころで、タケシバオーの能力の秘密といえば、まずこの点を指摘できるだろう。全体の比率としては、明らかにスタミナ優位の形態。以上を8項目評価に照らすと、以下の通り。

 ①=○、②=□、③=○、④=○、⑤=○、⑥=□、⑦=○、⑧=○
 総合評価=1A級 距離適性=8~15F

配合の妙味は十分に備わっている。

タケシバオーの血統構成の本質は、晩成中長距離と推測できる。4歳のスプリングSから5歳1月の初戦まで、連続7回2着を続けたという記録が残っているが、これなどは上位クラスの対戦では、まだまだ能力が全開しておらず、あと一息決め手を欠いたものとの見かたもできる。しかし、持てる能力が全開したと思われる古馬戦線では、芝・ダートの別、距離の長短、さらには斤量の変化もものともせず、オールラウンド型の競走馬として快進撃を続けている。

この要因を血統に照らすならば、まずダート2,100mの2分09秒5のレコードは、Son-in-LawのスタミナにOrbyのスピード。芝オープンのマイル戦とスプリンター・レースにおけるレコードはOrbyとCyllene。そして古馬最高峰レースの天皇賞は、前記「名馬の8条件」をクリアした全体のバランス--といった具合に当てはめることができるだろう。

ただし、ワシントンDCの敗戦は、レース中のアクシンデントや熱発による体調不良などの理由があるとは思われるが、やはり、世界で互角に戦うためには、あと一歩、上質のスタミナ、そしてスピードが不足していたとみるほうが適切だろう。

つぎに、同期のライバル馬たちと比較してみよう。タケシバオーは、4歳秋には海外遠征のため、三冠のうちの菊花賞には出走していないが、この世代ではマーチス、アサカオーとともに、「3強」として活躍した。皐月賞はマーチス、ダービーはタニノハローモア、そして不出走の菊花賞はアサカオーが制し、タケシバオーは4歳時は結局無冠のまま終わっている。

■マーチス(皐月賞 31戦14勝)
 ①=○、②=△、③=□、④=□、⑤=□、⑥=○、⑦=□、⑧=□
 総合評価=2B級 距離適性=6~9F

当時売り出し中の種牡馬ネヴァービート産駒で、スピードの血Tetratema-The Tetrarchを前面に配した血統構成で、たいへん珍しい形態の持ち主。Gainsboroughの世代ずれ、Blandford系のスタミナの欠落などがあって、決して一流の配合内容とはいえない。しかし、当時の日本競馬に不足していたスピードという個性をいち早く備えたことが、最大の武器となったはず。皐月賞の制覇などは、まさにそのたまものといえるだろう。とはいえ、菊花賞での敗退、あるいは古馬での重賞(現GⅠ)レースであと一歩及ばない成績だったのは、やはり前述したスタミナ不足が原因だったはず。

▸ マーチス分析表

■アサカオー(菊花賞、24戦8勝)
 ①=□、②=□、③=○、④=○、⑤=□、⑥=□、⑦=□、⑧=□
 総合評価=3B級 距離適性=9~12F

主導の明確性を欠き、スピードの再現、全体のバランスなどにも問題を残し、この馬も決して一流の内容ではない。そのかわり、弱点・欠陥はなく、GainsboroughやSwynfordのスタミナ、St.Simonを核として結合など、あか抜けはしないが、欠点の少ない血統構成であることも確か。堅実性を武器に、相手のスキに乗じてコツコツと勝つ、といったタイプであったことがうかがわれる。当時のブランド種牡馬ヒンドスタンの産駒だが、配合はこの馬がもっとも地味で、決め手を欠く内容。もしもタケシバオーが完調で菊花賞に出走していたら、当然、この馬を破っていたと思われる。アサカオーも、古馬におけるGⅠ級(現在の)レースの勝利はない。

▸ アサカオー分析表

■タニノハローモア(ダービー、30戦9勝)
 ①=○、②=△、③=○、④=□、⑤=△、⑥=○、⑦=□、⑧=□
 総合評価=2B級 距離適性=9~12F

分析表が示す通り、決してバランスのよい配合ではない。長所は、Chaucer主導のもと、St.Simonを核にスムーズな結合を果たし、スタミナを確保したこと。ダービーでは、「3強」が互いに牽制し合ったことで漁夫の利を得た勝利といわれたが、血統構成からみても、その評価は妥当と思われる。ただし、タケシバオーが完調でなく、マーチス、アサカオー程度が相手なら、レベル的には勝ってもおかしくはない。

▸ タニノハローモア分析表

同期のライバルたちと比較してみると、タケシバオーの世代は、「3強」とはいっても、決して皆のレベルが高かったわけではないことがわかる。血統構成だけでいえば、タケシバオーのみ1頭が優秀で、他の3頭は並のレベルと見るべきである。当時は距離体系やローテーションといった面で、現代ほど確たるものがなく、それはタケシバオーのレース選択をみても明らか。またタケシバオーは、現在でいうところのGⅠレースとしては、天皇賞しか勝っていない。そのために、評価が分かれる向きもあった。

しかし、出走レースを定め、きっちりと調教されていれば、4歳クラシック戦線でも、別の結果が出ていたように思える。とはいうものの、日本で最初の1億円獲得馬という勲章は、それに相応しい内容と質を持った血統構成馬に与えられということは、とくに記しておきたい。 最後にタケシバオーの産駒にも少し触れておこう。

種牡馬としてのタケシバオーは、母系の血の貧弱さのため、当初はあまり期待されなかった。初年度産駒の数が11頭、次年度も12頭ということにもそれは表れている。

しかし、その産駒の中から、中央ではトウカンタケシバ、ドウカンヤシマ、そして公営ではハツシバオーと、活躍馬を出して、徐々に認められるようになった。そしてBMSとしても、以前会報でも紹介したドクタースパートが皐月賞を制し、実績を高めることになる。

これら3頭の分析表も掲載しておいたので、それぞれの特徴、血の生かしかたを確認していただきたい。それぞれ、なかなか個性豊かな配合馬である。

●トウカンタケシバ
 ①=○、②=□、③=○、④=○、⑤=○、⑥=□、⑦=□、⑧=□
 総合評価=3B級 距離適性=9~12F

▸ トウカンタケシバ分析表

●ドウカンヤシマ
 ①=□、②=□、③=○、④=○、⑤=□、⑥=□、⑦=□、⑧=□
 総合評価=3B級 距離適性=9~11F

▸ ドウカンヤシマ分析表

●ハツシバオー
 ①=□、②=□、③=○、④=□、⑤=□、⑥=□、⑦=□、⑧=○
 総合評価=3B級 距離適性=8~11F

▸ ハツシバオー分析表

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