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サイレンススズカ

父サンデーサイレンス 母ワキア 母の父Miswaki
分析表

《競走成績》3〜4歳時に、16戦9勝。主な勝ち鞍は、宝塚記念(G1・芝2200m)、中山記念(G2・芝1800m)、金鯱賞(G2・芝2000m)、毎日王冠(G2・芝1800m)、小倉大賞典(G3・芝1800m)など。

 サイレンススズカと同期の2歳チャンピオンは、朝日杯を制したマイネルマックス(父ブライアンズタイム)、そして関西で行われるラジオたんぱ杯がメジロブライト(父メジロライアン)。種牡馬別でいえば、スタミナタイプの産駒が順調にG1路線に名乗りをあげていたわけである。年が明けて1997年も年初からそうした傾向が続き、サニーブライアン、シルクライトニング、シルクジャスティス、セイリューオー、エリモダンディーと、いずれもブライアンズタイム産駒の躍進がめざましかった。それと、ひときわ異彩を放っていたのが、ランニングフリー産駒のランニングゲイルで、武豊騎手とのコンビで皐月賞トライアルの弥生賞を制した。

 そうした状況の中で、サイレンススズカは、2月1日京都新馬戦・芝1600mでデビュー。前評判通り、手綱を持ったままで2着のパルスビートに7馬身差をつけて楽勝。2戦目で弥生賞に挑戦することになった。しかし、このときはゲート内でアクシデントを起こし、8着に敗れている。その後、立て直してダービーに挑戦したが、ここでもサニーブライアンの9着、以後3歳で5戦したが0勝に終わった。しかし、年が明けて、武豊騎手とのコンビ2戦目のバレンタインSから快進撃が始まる。初重賞の中山記念から毎日王冠まで重賞5連勝。その中には、金鯱賞のレコード大差勝ち、G1宝塚記念が含まれ、そして毎日王冠では59キロという斤量を背負いながら、エルコンドルパサー、グラスワンダーらに、それこそ影も踏ませぬ戦いぶりで、逃げ切り勝ちを演じている。

 そして、いよいよ天皇賞・秋。1枠1番を引き、サイレンススズカは予想通り、好スタートとともに、他馬とは別次元のスピードで向正面を進む。かつて2着馬に30馬身の大差をつけて勝った、ベルモントSにおけるSecretariatの姿をほうふつさせるほどの、軽快な走りぶりであった。しかし、3〜4コーナー中間の欅を過ぎ、あとゴールまで600mの地点で突如、悪夢のような事態が発生した。重度の複雑骨折……。テンポイント、ライスシャワーらと、同じ運命をたどることになってしまったのである。

 父サンデーサイレンスは米国産で、14戦9勝。ケンタッキーダービー(G1・10F)、プリークネスS(G1・9.5F)、BCクラシック(G1・10F)など、G1を6勝。ライバルのEasy Goerとの対戦成績は3勝1敗で、サンデーサイレンスに軍配があがる。しかし、その唯一の敗戦が、米三冠最後のベルモントS(12F)で、8馬身差をつけられての2着。このことは、距離が延びてのスタミナ比率では、明らかにEasy Goerのほうが上で、同時にサンデーのスタミナの限界を示した1戦だったともいえる。また、I理論上でも、配合レベルはEasy Goerのほうが勝り、12Fの距離における着差が、そのことを証明している。とはいうものの、サンデーサイレンスの血統構成は、「配合とは?」を考える上で、たいへん参考になる形態であることも事実。母系から出た活躍馬はなく、アルゼンチンの血を含んでいてマイナーといわれ、一般的な血統評価の低い母でも、一流馬を出すことが可能なことを示してくれた。

 そこで、サンデーサイレンスの配合について、より詳しく検証してみよう。父Haloは米国産で、31戦9勝。G1勝ちはユナイテッドネイションズH(ダ9.5F)のみで、競走馬としては決して一流の戦績ではなかった。しかし、種牡馬としてはサンデーサイレンスの他にも、タイキシャトルの父としてなじみのDevil's Bag(シャンペンS・G1)、ケンタッキーダービー馬のSunny's Halo、ケンタッキーオークス馬でキングヘイローの母でもあるグッバイヘイローなどを輩出している。母のWising Wellは、芝の9F前後のG2、G3レースを含め、12勝の戦績。繁殖牝馬としても、サンデーサイレンス以外には、これといった活躍馬を出していない。母の父Understandingも、87戦7勝のいわば二流馬ということで、サンデーサイレンスに対する一般的な血統評価はないに等しく、セリでは1万7000ドルでも買い手がつかなかった。

 サンデーサイレンスの血統構成は、まず主導がMahmoudの4×5で、5代以内のクロスはこの血のみ。Mahmoudは、英国ダービーをレコードタイムで制しているように、スピード・スタミナ比率のすぐれた配合内容を持ち、その意味では主導として申し分のない血である。偶然にも、父のHaloがHyperionを含まず、母Wising WellがNearcoを含んでいなかったために、Mahmoudの主導が明確になり、血の集合もはっきりとし、これがサンデーの配合の大きな特徴になっている。このMahmoudに対して、Mumtaz MahalとThe Tetrarchがスピード勢力として直接結合を果たし、スタミナはGainsboroughが直結している。また、Plucky Liegeを伴うSir Gallahadが、St.Simon、Bay Ronaldで結合を果たしている。その他、影響度数字に加算される位置にあるPharos〜Phalarisが、St.Simon、Canterbury Pilgrim、HamptonでMahmoudと強固に結合。Man o'WarもSainfoinによって結合を果たす、といった具合に、主なスピード・スタミナが、主導と直接連動態勢を整えていることが確認できる。ここが、サンデーの強さの秘密なのである。

 以上を8項目に照らし、以下の評価になる。

@=○、A=○、B=○、C=○、D=○、E=□、F=○、G=◎
総合評価=2A級 距離適性=ダート8〜10F

 マイナスは、上質のスタミナの核がやや不足していることと、特殊な米系の血と主導との結合に弱さのあることで、ここがEasy Goerとのクラシック・ディスタンスにおける着差となって現れたと考えられる。しかしながら、じつにシンプルで解りやすい血統構成であることも、分析表から十分に確認することができる。

 つぎに、サイレンススズカの母のワキアだが、こちらの主導はNasrullahの5・5×4の系列ぐるみで、母の母内Never Bendを強調。Princequilloの4×5は単一クロスで影響力は弱いが、その中にあるPrince Palatine、Gay Crusader、Rock Sandがクロスになって、スタミナ勢力として能力参加を果たしている。ついで、Sir Gallahad=Bull Dogが、Plucky Liegeを伴い、6・6・7×6・6・7で系列ぐるみを形成し、スタミナのアシストの役割を果たしている。強調されたNever Bend内も、Gay Crusader、Teddy、Blue Larkspurなどをしっかり押さえ、弱点・欠陥もなく、バランスのよい血統構成である。北米で7勝をあげたスプリンターだが、日本の馬場ならば、むしろマイル〜中距離に適性を持つ血統構成と判断でき、なかなか優秀な内容。

 そうした両親を持つサイレンススズカだが、自身の血統構成では、まず5代以内同士のクロスは、Turn-toの4×5のみで、これは途中Royal Chargerがクロスにならず、中間断絶になっている。となると、つぎに影響が強いのは、Pharamond=Sickleの5×7・7・8・8と、Nearcoの6×6・7・7・7。これら三者はPhalarisで一体となる。サイレンススズカの配合は、このTurn-toを構成する血が、ちょうどよい位置で全体をまとめる役割を果たしていることに、大きな特徴がある。その様子をもう少し詳しく見ていくと、まずSir Gallahad=Bull DogがTurn-to内のPlucky Liegeで、Blue LarkspurがSunstarで、HyperionがGainsboroughでというように、スピード・スタミナ要素が、すべて直接結合を果たしている。Turn-to自身は、8戦6勝のマイラーだったが、サイレンススズカ内のTurn-toは、父母内のスピード・スタミナの血がすべて集結しており、現実のTurn-toよりも数段パワーアップしたTurn-toへと、能力変換を遂げているのである。ただし、Bull LeaやPlucky Liegeといったスタミナ勢力が強いこと、特殊な血Colin(ベルモントSなど米15戦全勝の名馬)−CommandoがPeter Panの10代目にならないと結合しないこと、あるいはクロス馬の種類がやや多いことなどで、完全開花までには時間を要する傾向がある。サイレンススズカが、3歳時に見せた頼りなさの要因を血統に求めるとすれば、このあたりにあるといえるだろう。

 もう一つ、BMSのMiswakiの影響度数字が「0」になっているが、このことは、サイレンススズカの場合には、Mr.Prospector、Buckpasserなどの持つスピード・スタミナのキーホースがすべて押さえられており、Turn-toで直結しているので、マイナスには作用しない。むしろ、世代的にはちょうどよい位置でバランスを保っている。そして、サンデー内の血は、前記のColinを始め、Sans Souci、Voter、Sardanapaleに至るまで、じつにきめ細かくクロス馬になっていることが確認でき、まさに名馬と呼ぶにふさわしい。サイレンススズカの、あの空恐ろしいほどのスピードは、これら祖先の名馬たちの能力が、みごとに集約された結果だったのである。サンデーサイレンス産駒の中で、唯一最高位の「2A級」に評価したゆえんもそこにある。世界のトップレベルでも通用する条件を兼ね備えていたといっても過言ではない。

 サイレンススズカの8項目による評価は、以下の通り。

@=○、A=○、B=◎、C=○、D=○、E=□、F=○、G=◎
総合評価=2A級 距離適性=6〜11F

 サイレンススズカは、デビュー戦の時の馬体重が436キロ。2戦目の弥生賞が428キロ。競走馬として最後のレースになった天皇賞が450キロだから、体重だけみても確かに成長の跡をうかがい知ることができる。しかし、3歳の2月という遅いデビューにもかかわらず、3歳時に9戦。そして、快進撃を続けた4歳時には、年初から7戦で、計16戦を消化していた。並はずれたスピードと、日本の硬い馬場を考えると、脚元への負担は想像以上だったのかもしれない。もしも、種牡馬として残っていれば、いまごろは二世の活躍も期待できただけに、早すぎる死は本当に残念であった。


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